沖縄タイムス。
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八重山教科書:文科相「竹富町は無償対象外」 2011年10月27日 09時44分
【東京】中川正春文部科学相は26日の衆院文部科学委員会で、八重山地区の中学公民教科書採択問題について、育鵬社版を選んだ同採択地区協議会の答申と異なり、東京書籍版を採択した竹富町に対し「教科書の(無償措置法による)無償給与の対象にならない」とする同省見解を示した。無償法が適用されない事態となれば、1963年の同法制定後初のケースとなる。
一方、竹富町や識者は「子どもらの教育を受ける権利に関わる」などと憲法に抵触しかねない文科省見解を問題視している。
同省は近日中に県教育委員会から現状を聴き、八重山地区が同一教科書でまとめられていない場合、同見解を伝達する。
中川氏は地区協議会答申の有効性を「協議会で決めた規定に基づいて行われた結果だ」とし、答申通りに採択した石垣、与那国両市町は無償給与の対象となると説明した。
同時に「県教委になんとか(同一採択の)コンセンサスをつくるよう努力してほしいと言い続けている。ぎりぎりいっぱい努力してほしい」と発言。同省教科書課は同見解について、現状のまま本年度中に同一教科書でまとまらなかった場合の話であり、今後同一でまとまれば竹富町にも無償給与を認めるとしている。
無償給与の対象から外れた場合、中川氏は「市町村が自ら教科書を購入し生徒に給与することまで法令で禁止されていない」と説明。「町が購入した場合でも、生徒には無償で給与すると期待したい。文科省としてもそう指導したい」とも述べた。
答申と異なる竹富の採択について中川氏は「(地区内で同一の教科書を採択するよう定めた)無償措置法では違法状態」と推測したが、内閣法制局の整理を踏まえ「罰則までにはいかない」と判断したことも明らかにした。
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http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-10-27_25244/同じく沖縄タイムス。
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八重山教科書:県教育長「発言は想定外」 2011年10月27日 10時27分
八重山教科書問題で、大城浩県教育長は26日、竹富町が「無償給与の対象外」との見解を示した中川正春文科相の発言について、「発言は想定外。同一教科書をうたう無償措置法を犯すことになる」と文科相の解釈を疑問視した。八重山地区の全教育委員協議を有効とする文科省宛ての県教委文書に返答がないことも指摘、「私たちの真意が伝わっていない」と同省への不信感もあらわにした。今後、国に真意を確認する方針。同日の県議会決算特別委員会で比嘉京子氏(社大・結)らに答えた。
一方、竹富を無償対象から外し、石垣と与那国の2市町に限り無償とした場合について、狩俣智義務教育課長は「無償法第3条に『国は…義務教育諸学校の設置者に無償で給付する』との文言がある。大事なことと考える」と同法に抵触する可能性を示唆。「今後、国会でのやりとりを入手し、一字一句吟味して国の真意を把握したい」とした。
県側の今後の対応について狩俣課長は「係長レベルで情報収集している。国は、近日中に県教委や八重山の状況などを確認した上で、一定の判断を出すものと考えている。しっかり意見を申しあげたい」と述べた。
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http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-10-27_25245/同じく沖縄タイムス。
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八重山教科書:識者「支配 憲法と矛盾」 2011年10月27日 11時19分
憲法に詳しい琉球大法科大学院の高良鉄美教授は、教科書無償措置法などの法律は、教育権を定めた憲法をサポートする法律だとし「国が竹富町に教科書の購入を強いるのは、義務教育の無償を規定した憲法26条に違反する疑いがある」と指摘する。その上で「戦後、市町村に教育委員会ができたのは国の教育支配への反省から。今回、国が過度に介入し過ぎたために憲法との矛盾が生じようとしている」と批判した。
沖縄大学図書館の桜井国俊館長は「多くの人が自分の目で見て判断してほしい」と中学校社会科教科書を展示した。韓国や中国などアジア諸国との関係を考える上で教科書の選択は大切だとし、「無償給与が原則の教科書で、国が竹富町だけ有償というのは、脅しそのもの」と批判。教科書の採択は国が誘導するものでなく、「教育現場やそこに住む人たちの意向が尊重されるべきだ」と訴えた。
沖縄戦「集団自決(強制集団死)」記述から日本軍の強制を削除させた教科書検定意見の撤回を求める「『9・29県民大会決議』を実現させる会」の玉寄哲永世話人は「国に検定の透明化を求めている。手続きや運営方法を密室で決め、進めてきた採択協議会の答申を国が有効とするのは到底県民、八重山住民の理解は得られない」と指摘した。
一方、育鵬社の教科書使用について危機感も強まっている。
沖縄女性史家の宮城晴美さんは同社の公民教科書が「女らしさ、男らしさ、それぞれ受け止め方が違うが『男は外、女は家庭』という役割分担を当たり前のように求めている」と指摘。
「働くことは女性の能力の発揮という大きなプラスの側面がある。学校で混合名簿の普及は進まず、就職でも男女差別が残る中、主体性が曲げられる戦前に戻るような教科書で、将来を考え始める中学生が学ぶことの悪影響は大きい」と危惧する。
県PTA連合会の宮城辰三会長は「合意に向けてまだ話し合いの最中だ。結論も出ていない中でなぜそんなことを言うのか。地域のことは地域に任せてもらえないか」と切望。「県がまとめ役で頑張っている。国が口を出す問題ではない。地域がバラバラになってしまう。八重山の民意に即して考えないといけない問題なのに国の姿勢には疑問を感じる」と強い不信感を示した。
[ことば]
育鵬社 扶桑社が100%出資した教科書出版子会社で、2007年8月1日に創立。12年度使用開始の中学校教科書では「公民」のほかに「歴史」の発行も手がけ、今年の全国での採択率は「公民」「歴史」それぞれ4%前後を確保する見込み。前身の扶桑社が初めて教科書事業に参入した「歴史」の01年採択率は0・04%だった。
「公民」「歴史」ともに「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会、屋山太郎代表世話人)のメンバーが執筆している。改善の会は「新しい歴史教科書をつくる会」から内部分裂したグループで、他社の教科書を「自虐的」などと批判している。
つくる会系教科書は育鵬社に加えて自由社がある。愛国心や天皇、自衛隊の存在を重視するなど国家主義的な色彩が濃いとされ、全国各地で採択反対運動が起きている。
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http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-10-27_25252/同じく沖縄タイムス。
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八重山教科書:突然の「有償」に絶句 2011年10月27日 11時20分
「竹富にどんな瑕疵(かし)があったのか」「国の不当な介入だ」―。中川正春文部科学相が、八重山地区の中学公民教科書採択問題で、東京書籍版を採択した竹富町に「教科書の無償給与の対象にならない」との見解を示したことに26日、同地区の教育関係者や保護者の間に、国への反発と不信が広がった。県教育委員会も加わり打開策を模索する最中、識者などから文科相の一方的とも映る発言を「脅し」と受け止め、義務教育の無償を定めた憲法抵触への可能性や地域の分断、生徒への悪影響を心配する声も上がっている。
中川文科相発言を報道陣から聞き、初めて知った竹富町の慶田盛安三教育長は「まさか。本当の話なのか」と絶句。一呼吸おいて「国からはこれまで指導もなかった。選定から採択のプロセスの中で、竹富にどういう瑕疵(かし)があったのか、はっきり示してほしい」と怒りに変わった。
「無償で教科書を与える無償措置法は子どもの教育を受ける権利を大事にしたものだ。なぜ子どもにペナルティー(罰)を与えるのか。無償法だけの問題ではなく、憲法問題に発展する可能性がある」と厳しく指摘した。
慶田盛教育長は東京書籍版の公民教科書を採択した3市町の全教育委員協議の有効性をあらためて訴え、「今は県の指導助言を待ちたい」と県の対応を見守る考え。
同町の竹盛洋一教育委員長も「義務教育は教科書の無償をうたっている。なぜ竹富だけ有償か。国は法律をどう解釈しているのか」と反発。「例え有償でも東京書籍が使える見解を国が示したことはいい。しかし、3市町が東京書籍で統一できなければ残念だ」と声を落とした。
沖教組八重山支部の上原邦夫支部長は「竹富町に対する脅し」と文科相見解を批判。国自らが無償措置法を無視し、全委員協議を有効とした県教委文書を踏まえない姿勢を疑った。
一方、文科相発言を受けて、石垣市などの保護者や住民も積極的に育鵬社版の不採択を求める運動に乗り出す構えだ。
「子どもと教科書を考える八重山地区住民の会」は同日から、地区内の小中学校長やPTA会長との面談を開始。教育現場からも、東京書籍の採択に向けて市教委に対し声を上げるよう要請を始めた。
大浜敏夫事務局長は「竹富に有償を促したのは国の不当介入だ。全教育委員協議の結果を認めず突っ張った石垣と与那国の2教育長が問題で、『ごね得』がまかり通ってはならない。子どもが犠牲にならないよう保護者や教職員と連携する」と力を込めた。
地区PTA連合会の平良守弘会長も「保護者の立場から見ても育鵬社は好ましくないという中身の問題」として、有志で不採択を求める署名運動を展開する考えを明らかにした。与那国町在住で中学生の子を持つ山口京子さん(53)は「県教委が国へ(全教育委員協議有効の)公文書を出している。どうして無視するのか理解できない」と首をひねる。「与那国でも状況をみながら、竹富を応援できないか考えたい」と話した。
「当然のこと」石垣・与那国2教委
【八重山】中川文科相が26日、竹富町は教科書の無償給付対象にならないという見解を示したことを受け、八重山地区協議会の答申に沿って育鵬社版の公民を採択した石垣、与那国の2市町教委はいずれも「法律に従った結果で、当然のこと」と歓迎した。
与那国町の崎原用能教育長は「国は地方教育行政法と教科書無償措置法という2法の趣旨通りの判断を下した。これが本来の指導の姿だ」と喜ぶ。「協議会で一本に絞った教科書を採択するのが法律に従ったやり方なのに、県教委が介入しておかしくなった」との見解を示した。
その上で「竹富町が決定に従わず、育鵬社版を使わないのであれば残念だ。国が一本に絞ってくれると思っていた」と述べた。
石垣市教委の前花雄二教育部長は玉津博克教育長に代わって「私たちは無償措置法に従って(協議会答申通り)採択し、8月30日には(採択教科書の)報告も終えている。竹富町が法律に従わなかっただけのことだ」と語った。
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http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-10-27_25254/琉球新報。
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竹富は無償対象外 八重山教科書で中川文科相が言明 2011年10月27日
写真キャプション:中川正春文科相 【東京】中川正春文部科学相は26日の衆院文科委員会で、八重山地区の中学公民教科書問題で、同地区の採択地区協議会が答申した育鵬社版とは異なる東京書籍版の公民教科書を採択する意向を示している竹富町について「教科書の無償給与の対象にならない」と述べ、育鵬社版を採択しなければ教科書の無償給与は認めず、東京書籍版を使用する場合は町の自費購入を求める考えを明らかにした。
近く県教育委員会に同様の方針を伝える。瑞慶覧長敏氏(民主)への答弁。
無償措置を適用しない自治体が出れば、1963年の教科書無償措置法制定後初となる。文科省は同方針でこの問題の幕引きを図りたい考え。竹富町教育委員会は「違法なことはしていないのに有償にするのはおかしい」と反発している。
中川氏は「文科省としては8月23日の採択地区協議会の答申と8月31日の協議会の再協議が協議の結果だと認識している。それに基づき採択した石垣市、与那国町の教育委員会は無償給与の対象になるが、協議の結果に基づいた採択をしていない竹富町はその対象にならない」と述べた。
その上で「地方自治体が教科書を購入し、配布することは法令上禁止されることではないことを法制局に確認した」と述べた。
委員会後、琉球新報などの取材に対し中川氏は「今後、県が(八重山地区)3市町の協議の場を持ち、同一化できればそれで問題ない。そうでない場合は、竹富による有償購入をとがめないということだ」と述べ、同一採択が実現しない場合の対応策との考えを示した。
八重山採択地区協議会は8月23日に多数決で公民教科書は育鵬社版を選定したのに対し、竹富町教育委は育鵬社版の採択拒否の方針を表明。同31日に協議会役員会で再協議したが物別れに終わった。9月8日の3市町による全教育委員による協議は東京書籍版の採択を決めたが、石垣教育委員長、与那国教育委員長の2氏が同協議の無効を訴える文書を文科省に出し、採択結果の不統一が続いていた。
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http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183296-storytopic-238.html同じく琉球新報。
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文科相発言に抗議 八重山教科書採択 2011年10月28日
写真キャプション:中川正春文科相への抗議声明を発表する村田栄正共同代表(左から2人目)ら=27日、石垣市役所記者クラブ室 【八重山】子どもと教科書を考える八重山地区住民の会は27日会見し、26日の衆院文部科学委員会で「竹富町は無償給付の対象とならない」と発言した中川正春文部科学相への抗議声明を発表した。27日付で中川文科相に発送し、発言の撤回を求めた。
石垣市教育委員会と与那国町教育委員会に対し、9月8日に行われた教育委員全員による協議に従って東京書籍版公民教科書の需要冊数を県教委に報告するよう求める署名活動を始めることも明らかにした。
声明文は、文科相発言は全員協議の有効性を示す県教委の公文書や住民の会の要請を「全く無視したもの」と批判。「教科書無償措置法による全員協議が優先されるべきものであり、文科省の発言はこれを無視した違法なものである」と指摘した。
竹富町の公金で教科書を購入することは義務教育の無償を求めている憲法26条2項にも違反することも主張した。
村田栄正共同代表や大浜敏夫事務局長は「大臣の発言は『日替わり』で混乱を招き、県民をあまりにも愚弄(ぐろう)している」と話した。
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http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-183366-storytopic-238.html