とどくとおもう Ⅱ

Full of Junk and Nothing

敗戦と終戦と

今日の天声人語の主題の一句。

   命綱たのむをかしさ敗戦忌

cf.01――作者に関する文章
cf.02――「敗戦忌」を含む俳句

130815Th天声人語の全文。
***************************************************
角川書店の創業者で国文学者でもあった角川源義(げんよし)に〈命綱たのむをかしさ敗戦忌〉の一句がある。1975年の8月15日にがんで入院し、最期の闘病中に詠んだと、長女で作家の故・辺見じゅんさんからお聞きしたことがある▼
同世代が大勢落命したのに、自分は生き延びた。いま病を得て、治療を命綱と頼んでいる。そんな我が身を突き放して眺めた句であろう。源義氏は「終戦」という言葉を嫌った。辺見さんが不用意に使うと、「あれは敗戦だ。終戦なんて簡単に言うな」と怒ったそうだ。譲れない一点だったようである▼
同じ思いの人は少なくないと見え、この欄でも毎年「終戦」と書くと、ご意見が届く。やや意味合いは異なるが、「終わるものなら、なぜ」と恨む手紙もあって考えさせられる▼
先の戦争での日本人戦没者は軍民で約300万人。その数は戦争の末期に激増し、最後の1年で200万人近くが落命した。特攻、沖縄、空襲、原爆――悲劇の多くがこの間に起きている▼
特攻隊で8月15日に出撃予定だった人の話を、朝日小学生新聞で読んだ。命拾いしたのだが、数日早く出撃した人もいよう。最後の1年を逆回しして玉音放送を早めてみれば、死なずにすむ人は日々増える。きょうは遅すぎた敗戦の日でもある▼
「敗戦」への執着は、無謀な戦いに突き進んだ愚を忘れまいとする戦中派の心であろう。「軍事力の敗北であった以上に若い文化力の敗退であった」と源義氏は述べている。色あせぬ言葉だと思う。
***************************************************

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する