とどくとおもう Ⅱ

Full of Junk and Nothing

ぷ~た資料1043:会長のスピーチ

「スピーチ原稿を書いてくれないか」と頼まれた。
たしか「全日本PTA連合会」とかいう団体の関係者から。
そこの懇親パーティーで会長が挨拶するのだそうだ。
「やってみましょう」と言って引き受け、テーマを聞き、関連資料を読み込み、こんな感じで書きはじめた。

***************************************
皆さん、こんばんは。
本日はようこそご参集くださいました。
年に一度の懇親パーティー。
おいしそうな料理とおいしそうな飲み物を前にして、私もおなかがうずうずしております。

しかし、申し訳ございません。
乾杯の音頭を取らせていただく前に、大事なお話をさせていただきたく、少々お時間を頂戴いたしますことをお許しください。
***************************************

ここまで書くと調子が出てきたので、残りを一気に仕上げた。

***************************************
と申しますのも、ここ数年、PTAが世間から非難の的にされているからでございます。
PTAが世間から非難ごうごうの状態であることは、本日お集まりの皆さん、お一人お一人がよくご存じのことと思います。

ひとことで言うと「PTAはひどい」という非難を浴びております。
長めに言うなら、次のような非難です。

「PTAは子どもの教育をそっちのけにして奴隷狩りのような役員選びにばかり力を注いでいるろくでもない組織」

皆さん重々ご承知のとおり、いわゆる「PTAのひどさ」は、ここ数年、毎年毎年、テレビドラマで放映され、ラジオドラマで放送され、新聞や週刊誌で報道されてまいりました。フィクション、ノンフィクションを含め、単行本も少なからず出版されています。
地方のテレビ局でも、いわゆる「PTAはひどい」問題を報じました。
NHKに至っては、何と、総合テレビでも教育テレビでも、いわゆる「PTAはひどい」問題を放映いたしました。
はらわたが煮えくりかえる思いでご覧になった方も多いことと存じます。

憲法学者が大学の講義で「違法PTA」という言葉を使用して解説しています。
大学生のうちから「PTAって非合法なことやってる組織なんだ」と学んでしまうわけです。

インターネットでは「ブラックPTA」や「PTAうざい」という言葉で検索すると山ほどヒットします。
ネットユーザーは「やっぱりPTAってダーティーなのね」「うざいのね」と思い込んでしまうわけです。
たった6文字「修羅場らしい」という言葉で検索しただけで、トップに、あるサイトの名前が出ます。
私どもがいくら憎んでも憎みきれない有名なサイトです。
金輪際、私は、全日本PTA連合会の会長として、そのサイトの名を言いたくありません。
そのサイトの名を口にした友人とは、私、絶交いたしました。正直もうしまして、私、何人もの友人と絶交するに至りました。

ユーチューブでは『くたばれPTA』という歌を色々なバージョンで聞くことができます。

このように、ここ数年、私どもPTAは、世間から「PTAはひどい」と非難を浴び続けてまいりました。
その結果、今、日本のPTAはピンチです。
存在がピンチなのではなく、イメージがピンチなのです。
ほんの少し前までの、懐かしい、PTAの「清く、正しく、美しい…けど、おせっかい」という三善一苦のイメージが、風前の灯です。
今やPTAは「濁っていて、間違いだらけで、薄汚くて…なのに、おせっかい」という三悪一苦、あるいは四重苦、いっそのこと四悪といったほうが早い、そんなイメージなのであります。

かつてないほど圧倒的にイメージダウンしたPTA。
どうしたらよいかお悩みの方も多いと思います。
そこで、私ども全日本PTA連合会の役員は対策会議を開き、討議を重ねました。
そして、このほど、ようやく一つの結論に漕ぎつけることができました。
その結論を、ここに謹んで、呼び掛けの形で発表させていただきたいと思います。

日本のPTAを「違法PTA」のまま世界文化遺産に登録してもらう運動を展開しよう!

これが結論です。
いかがでございましょう?

これは、これこそは、ピンチをチャンスに変える作戦です。
弱くても勝てます。汚くたって綺麗です。違法でも合法です。
世界文化遺産になってしまえばこっちのものです。

皆さんご存じのように、アメリカで生まれて日本に移入されたPTAは、日本の地で独自の発展を遂げ、今も遂げながら、すでに独特の文化となっております。
その独特さは、アメリカのPTAを凌駕したといっても全く過言ではないでしょう。

そうです、日本のPTAはユニークなのです。

日本史に詳しい方はヒヤっとするでしょうが、テロリストの不穏な合言葉である「一人一殺」とそっくりの四字熟語が、日本のPTAにはございます。
「一人一役」です。明朝体の漢字で印刷された「一人一役」を目にしますと、役という字を横目でにらんでいるように見えます。
この「一人一役」のほか、「くじ引き」「ポイント制」も日本のPTA独特の用語です。
つまり、「一人一役」「くじ引き」「ポイント制」は、日本のPTAの特色を表す用語なのです。

そのほかにも四つ、日本のPTAの特色を表す用語をおさらいいたしましょう。
うち二つを、すでに申しましたが、もう一度申します。

「違法PTA」「ブラックPTA」「母親を泣かせるPTA」「強制加入」、この四つです。

しかし私は、この四つを日本のPTAの四本柱として、高く高く評価したい。
そういう評価に皆さんもご異存ないことと、私は固く固く、信じます。

「違法PTA」――それでこそ日本のPTAなのです。
かつて、リンカーンは胸を張って言いました。
「人々の、人々による、人々のための、政治」と。
今、日本のPTAも胸を張って言おうではありませんか。
「PTAの、PTAによる、PTAのための、違法」と。

どうぞ皆さん、ご唱和ください。
後ほどの乾杯の音頭も、これで参ります。その予行演習とお考えください。
では。
「PTAの、PTAによる、PTAのための、違法!」
ありがとうございました、厚く感謝申し上げます。
なお、後ほど乾杯する際には「違法PTA万歳!」を付け加える予定でございます。

話を続けましょう。

「ブラックPTA」――それこそ、日本のPTAのあるがままの姿なのです。
「ホワイトPTA」? 冗談じゃありません。白けます。
「レッドPTA」? おとといおいで、です。赤の他人です。
ブラックでなければ日本のPTAではございません。

「母親を泣かせるPTA」――これも日本のPTAのあるがままの姿であり、あるべき姿であり、あり続けるべき姿であります。
思い出してください。昨年度、全国からたくさんのご応募をいただいた「日本のPTA川柳コンクール」の金賞は二つでした。
審査員一同、甲乙つけがたい二つの作品に、全会一致で金賞を差し上げた次第です。
つい先日、広報紙『全日本PTA』特別号の第一面に大きく印刷してお配りいたしました。
  「泣いたけど やってよかった PTA」
  「PTA 涙の向こうに 虹がある」
苦難の果ての栄光。負けるが勝ち。涙の数だけ強くなる。
…この美しさ。この決して一筋縄ではいかない美しさ…いわばねじくれた様式美…盆栽にも通じる美しさこそ、日本のPTAの世界に誇るべき特色だということを、ああ皆さん、いったい私どもの誰が否定できますでしょう?

よく「PTAは入会するのも自由だし退会するのも自由だ」という声を聞きます。
マスコミでもそのように報道いたします。
「けっ! バカも休み休み言ってほしいものだ!」と、心ある皆さんのお一人お一人が、狂おしいほどのののしりたい気持ちでお思いになることでしょう。
そのとおりです。
その、狂おしいほどのののしりたい純粋なお気持ち、それだけがこの世の真実です。
「自由加入のPTA」など、決して日本のPTAにあってはならないものです。
「強制加入」、それこそが日本のPTAなのです。

ちなみに、「強制加入」と言うと聞こえがよろしくないとの理由からでしょうか、よく「自動加入」と言う人もいます。
しかし、この「自動加入」は危険をはらんだ言い方です。
なぜならば「自由加入」と1字違いだからです。「自由加入」と1字違いだから危険なのです。
「自動加入」と言うつもりでも、うっかり「自由加入」と言ってしまうかもしれません。
「自動加入」と書くつもりでも、ついうっかり「自由加入」と書いてしまうかもしれません。
何よりも「自動加入」は「自由加入」と聞き違えられてしまう可能性がありますし、読み違えられてしまう可能性があります。
このように1字違いは危険なのです。
ひらがなにすると一目瞭然です。
実験してみましょう。
オリンピック東京招致を決めた我らが滝クリさんのエレガントなパフォーマンス「お・も・て・な・し」にならって、非エレガントながら、私、マドモワゼル滝クリに及びもつきませんけれど、ちょっとパフォーマンスしてみます。
以下2行、クロマルはサイレントで丸カッコ内のひらがなの形に口を動かします。
  「じ・●(ど)・う・か・にゅう」
  「じ・●(ゆ)・う・か・にゅう」
この実験結果から明らかなように、1字違いは危険をはらんでおります。

ですから、「強制加入」というほうが絶対によろしいかと存じます。

話を戻します。

「強制加入」――これこそが日本のPTAのイノチです。
日本のPTAのアイデンティティーです。不変不滅のアイデンティティーなのです。
私ども全日本PTA連合会とよく間違えられますが、似て非なる組織に「日本PTA全国協議会」というものがございます。
歴代の会長は中央教育審議会の委員です。
そのお一人が、数年前でしたでしょうか、「日本のPTAは強制」とおっしゃいました。
アメリカのPTA関係者との対談で、そうおっしゃいました。
そうおっしゃったのは、当時の日本PTA全国協議会の会長で、中央教育審議会委員なのです。
年齢からいって、日本に移入されたPTAが独自の発展を遂げるのと並行して、日本で教育を受けた方です。
つまり、日本のPTAの申し子みたいな方です。
言い換えますれば、PTAが移入されてからの日本における教育成果の生きたお手本です。
その方が「強制加入」と、日本のPTAの輝かしい伝統を、事実として、淡々と述べたわけです。
皆さん、ご承知のように、伝統という事実ほど貴重なものはございません。
つまり、日本PTA全国協議会は「強制加入のPTA」から成る組織なのです。
私ども全日本PTA連合会にしても同様です。
「強制加入のPTA」以外の入会など、一切、認めておりません。

日本のPTAを世界文化遺産に!
この運動方針に基づき、私どもは今、以下の七つの特色を前面に出して、日本のPTAが、どれほど世界文化遺産にふさわしいものであるかということを、力強くアピールしてまいろうと考えております。
「違法PTA」
「ブラックPTA」
「母親を泣かせるPTA」
「強制加入」
「くじ引き」
「一人一役」
「ポイント制」
このほかにも、日本のPTAが持つ、世界文化遺産にふさわしい特色があろうかと存じます。
それをどうか、皆さんもお考えになって、ぜひ教えてください。
繰り返しますが、日本のPTAは「違法PTA」であるまま世界文化遺産に登録されることを目ざします。
ですから、世界文化遺産にふさわしい特色は違法性が含まれるものであること、これが欠かせません。
何とぞよろしくご協力をお願いいたします。
皆さん、世界文化遺産に向けて、一緒にがんばりましょう。
「子どもたちのためのPTA」というスローガンには、ご存じのとおり、前提がございます。
「PTAあってこその子どもたち」という前提です。一番はPTAなのでございます。
カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは…のメロディーで歌いますと、「PTAが一番、子どもは二番」なのです。
「三時のおやつは今日も抜き」で一向にかまいません。PTAが一番なのですから。
まずPTAがあってこそ、PTAは、子どもたちのための活動と称するものが、できるのです。
ですから、PTAあってこその子どもたちのためにも、正々堂々と「違法PTA」の灯を掲げましょう。

なお、物の本によりますと、「PTAが日本の教育を悪くした」とおっしゃった首相がいらっしゃいます。
日本の首相です。
「PTAが日本の教育を悪くした」、この苦言も、私どもは、日本のPTAの一員として甘受しなければなりません。
教育をダメにするPTA、それこそが日本のPTAです。
はなから教育をダメにするために活動しているわけでは全然ありませんが、ああら不思議、日本のPTAは、活動すればするほど、教育をダメにしてしまうのです。
日本のPTAの宿命だといえます。
PTA広報委員の仕事に忙殺されて子育ての時間を犠牲にする方々は、日本全国津々浦々、毎年、ゆく年くる年、もう、ざらにおられます。
広報委員とかぎりません。
ありとあらゆる委員、ありとあらゆる役員、ありとあらゆる一役会員が、せっせせっせと励まなければならないPTA活動を重んじる以上、子どもの宿題など見る暇がなくてあたりまえ、子どもの食事の栄養バランスなど気にしない。
そうなります。日本のPTAの宿命です。
子どもの教育も養育も放り出してPTA三昧。これぞ日本のPTAです。
ですから「教育を悪くするPTA」「教育をダメにするPTA」と評されます。
日本のPTAの名誉ある宿命です。
何よりもかによりも、世間は誤解しておりますが、皆さんご存じのとおり、PTAは教育団体ではございません。
教育関係団体でございます。
社会教育法に「社会教育関係団体」という用語があり、PTAはこの用語で定義される団体です。
教育団体ならば「教育する団体」ですが、「教育関係団体」ならば「教育に関係する団体」といった代物にすぎません。
この「関係」「関係する」という一種しょぼくれたニュアンスの言葉は大事です。
「教育する団体」が教育を悪くする、教育をダメにする。それは許されません。それは恥ずべきことです。
しかし、たかが「教育に関係する団体」なのですから、PTAが教育を悪くしたり教育をダメにしたりするくらい、何も恥ずべきことではありません。もちろん自慢できるほどのことでもありませんが。とはいえ再度、名誉ある宿命であるということだけは釘を刺しておきたく存じます。
とにかく、「教育団体」という4文字の真ん真ん中にちゃっかり割り込んで腰を据えた「関係」という2文字の持つショボクレ感を大事にしたいと思うわけであります。
大事にすれば、たとえ「教育団体のくせに何だ!」と叱られても「関係団体だから許して!」とお詫びでき、万事まるくおさまるというものでございます。

というわけで、皆さん、ご清聴ありがとうございました。

すみやかに、乾杯の音頭にうつります。
皆さん、グラスのご用意はよろしいでしょうか。

では、「日本のPTAを世界文化遺産に!」という熱い思いを込めて、先ほどの予行演習どおり、よろしくお願いいたします。
元気いっぱいご唱和くださいませ。
「PTAの、PTAによる、PTAのための、違法! … 違法PTA万歳! …かんぱぁーい」
ありがとうございました。
***************************************

・・・何とか書き終えてホッとしたせいか、生ビールを呑みたくなった(微笑)。

・・・・・・無事にスピーチされたらしい。see⇒

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

お茶飲みながら読ませていただきました。
・・・・・・今からキーボード拭きます・・(´;ω;`)
思いっきりふきました。

chiko | URL | 2014年05月20日(Tue)19:07 [EDIT]


Re:

chikoさん、ども!

キーボードが無事でありますようお祈りいたします。申し訳ございませんでした。

御笑覧たまわりありがとうございました。
厚くお礼申し上げます。
似た傾向のものに≪ぷ~た論92:PTAモラルキャラバン隊が必要!≫というエントリがあります。
いつか高覧いただければ幸いです。
  http://todoct.blog85.fc2.com/blog-entry-5018.html
PTA系の川柳は「pta 童女」で検索してヒットするサイトに傑作選(?)がまとまっています。

今後とも安全な形で御ひいきにしてくださいませ。

FJN | URL | 2014年05月21日(Wed)08:23 [EDIT]


文科省文化財担当

http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki2/kanbumeibo.htm

シンポジウムにいらしていた元生涯学習局担当者さまが、現在は文化財担当。

もしかしたら、もしかしたら、登録されるかも!?

と思ってしまいました。

匿名 | URL | 2015年04月22日(Wed)14:16 [EDIT]


Re: 文科省文化財担当

ども!
はい、Mr神代は賢明で冷静な能吏だという印象があります。
世界文化遺産登録に向けて好い仕事をしそうな文科省メンバーの1人だと思います。

FJN | URL | 2015年04月23日(Thu)19:01 [EDIT]