とどくとおもう Ⅱ

Full of Junk and Nothing

毎日新聞19750710Th朝刊18面トップ記事

毎日新聞1975(昭和50)年7月10日(木)朝刊18面のトップ記事は結構な文字数の長文だ。
文責は藤田恭平記者、この時48歳の年男(1952年に毎日新聞社入社。前年東京大学文学部倫理学科卒業。入社後は社会部に配属され1953年から学芸部の教育関連担当)。
以下、その藤田記者筆当該取材記事の全文字データ。
ただし元記事の漢数字の算数字置換、所番地黒丸化、適宜改行、レイアウトetc.byFJN。

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国立大付属校の諸経費
 父母負担は違法
  一父兄 文相相手どり訴訟
 国立大学の付属学校(幼稚園から高校まで)で、本来国費でまかなうべき諸経費を児童・生徒の父母に負担させ続けているのは文部省の責任だと怒った父親が9日、永井文相を相手取って東京地裁民事第二部に法令違反行為の中止を求める行政訴訟を起こした。
この人は東京日野市多摩平団地●●●●●、松下太郎氏(67)=会社顧問。
訴状では
「国立大学付属学校の①学校施設と維持費②講師の謝礼③教職員の研究費旅費④校医の謝礼⑤衛生費――その他、当然国費でまかなうべき多額の経費負担を在籍児童・生徒の父母に転嫁している行為は、学校教育法第5条に違反するだけでなく、地方財政法第27条並びに同施行令第16条の違反類似行為である。文部省は率先してこれらの法令を順守すべき立場にあるので学校設置者の負担すべき経費の受入れは直ちに中止すべきである」
としている。
 これまで公立学校について、公費で負担すべき学校運営費をPTAなどを通して父母に負担させてきたことには、厳しい世論の批判から、東京都をはじめかなり多くの自治体で問題解決の対策を講じているが、国立大学付属学校については一般にあまり問題にされなかった。
 松下氏は全国PTA問題研究会(代表・宮原誠一東大名誉教授)の運営委員で「PTAと教育の中で15年」(学事出版刊)の著書もある。
現在都下の公立小学校の教員をしている長女が、日野市立第五小学校に入学した昭和33年からPTAにかかわり、東京学芸大学付属小金井中学入学と同時に同校PTA会員になったが、当時入会金は1万円、会費月額950円だった(PTAは入会金はとらず、会費月額100円程度がふつう)。
長女が付属中学3年生のとき、プール新設で文部省から350万円の予算が出ることになったが、必要総額との不足分550万円は在籍者の父母だけの負担では金額が多すぎるので、将来8年間にわたって新入生の父母にも負担させることにし、PTA正副会長が個人保証をして銀行から借りた。
 松下氏は反対したが容れられず、文部省会計課へ直接抗議に行ったところ、係員から「国立の学校は私立より余計に金がかかることを知らなかったか」といわれた。
松下氏は世論に訴えるほかはないと考え、その後新聞投書を重ねて来たが、文部省の回答は全く誠意のないものだったという。
6月23日、参議院文教委員会で公明党の内田善利議員がこの問題を取り上げて政府を追及したが、文部省側の答弁は“のらりくらりしていた”(松下氏)。
あとは訴訟しかないと松下氏は決意したという。
 阿部充夫・文部省大学局教職員養成課長の話 訴状を検討してみなければ訴えの趣旨がよくわからない。国立大付属校といっても一般家庭の子供が通うのだから、PTA会費が高すぎるのは決して好ましいことではない。だが国がPTAからの寄付を受け入れたことはない。松下氏が指摘している東京学芸大学付属のプールの例も、国は普通のプール建設費を措置したのにPTAが独自の判断で更衣室、浄化装置その他プラス・アルファしたものだ。それも44年以降は一切やめているはずだ。
“特権の代償”の錯覚に問題
 国立大学付属学校は、学校数は公立学校と比較にならないほど少数で、むしろ多額の父母負担は“付属”名門校の“特権の代償”のように錯覚され、一般の公立学校には通用しそうもない不条理が行われてきたところに問題がある。
こんどの訴訟でどこまで是正できるか、注目される。
 松下氏が用意した資料のうち、一例として広島大学付属中学・高校PTAの「一般会計」「特別積立金会計」「共通費会計」(いずれも48年度決算書)の内容を見ると――
①「一般会計」。収入805万円。支出は18項目だが、使途の性格がわかりにくい記載方法。人件費148万円、研究出張費142万円、転退職員記念品費60万円、校務出張費56万円、生徒付添費54万円など、予算のほとんどを学校に流用されていて、PTAのために使ったと思われるのは慶弔費10万円と各部運営費6万5千円くらい。
 ②「特別積立金会計」。新入会員から1万5千円ずつと毎月全会員から5百円ずつ徴収して収入総額1905万円(うち前年度からの繰越金802万円)。すべて施設、設備、備品に使われ、残り1474万円は翌年度への繰越金。
 ③「共通費会計」。収入総額921万円。支出は消耗品費199万円、非常勤講師の人件費などの諸手当195万円、図書費148万円、備品・設備費131万円、進学指導費59万円、入試費38万円など。
 三種類の私費会計を合計すると3631万円にのぼる。
広島大学付属中学校・高校に在籍する生徒計954人の父母は、このうちのおよそ3600万円までを税外負担しているわけだ。
いいかえれば、付属中学・高校当局は施設・設備・備品費から人件費、消耗品費に至るまで、まるで第二税務署のように独自の財源調達をしていることになる。
これは公財政の乱れというゆゆしい問題である。
                    (藤田恭平記者
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ちなみに、1971年に結成された全国PTA問題研究会の事務局長を3年務めたのが藤田恭平である。

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